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水元が、護衛の方法を検討していた。
第三章 ガラスの花束
瞬と同じ御使いの雪村は、ホテル住まいをしていたが、時折瞬の家に遊びに来るようになっていた。瞬も、御使いとは何かを知る事ができるので、歓迎している。
「雪村さんは、何の仕事をしていたのですか?」
一階で、瞬が厨房に居ると、雪村が代わりラーメンを作ってくれた。それが、非常においしい。
「始めバイトから入って、ラーメン屋の店長をしていたのだけど、御使いはダメでね」
異常に、ラーメンブームができてしまったのだそうだ。組織は、一般の御使いに、介入はできるだけしないという決まりがあるが、異常なブームだったらしい。
「そこで、食べ物系がダメだということで、転職したのだけど、営業もダメだと言われた」
そこで、研究所の職員となり、毎日、食品の検査をしていたそうだ。
「意外に不便なのですね、御使いって…」
雪村は、職業以外は自由だったと、笑っていた。雪村は、自分が御使いということには気がついていたが、周囲ものんびりしていて、自由だったのだそうだ。
雪村の来訪の目的は、実は瞬ではなく、瞬の護衛をしている田中 亜里沙(たなか ありさ)に会いにきていた。亜里沙も、雪村が来ていると知ると、瞬の確認と称してやって来る。
「瞬君、武蔵、居る?」
亜里沙は、武蔵の姉でもあるが、同居はしていない。
「亜里沙さん、雪村さん来ていますよ」
亜里沙は、知っていてきているのだが、とりあえず瞬も声を掛ける。
亜里沙は、雪村と出会ってから、きれいになってきていた。昔から可愛い面はあったが、雪村が来てからは、きれいと呼べるようになってきていた。
目の輝きが増す、肌が光る、亜里沙は瞬よりも雪村を見ていた。
「ごゆっくり」
瞬は、階下へと移動する。しかし、雪村が『神の御使い』から亡命していることで、亜里沙の恋は成就が難しい。そもそも、『神の御使い』と『死から来た者』は、結婚することができないのだ。
早く【終末の旗】をどうにかして、雪村を『神の御使い』に帰すしかない。
光流の情報はありがたかったが、瞬はどうすることもできないでいた。光流は人質交換で、【黒術死】に返されたというが、都築の手がつけられた状態で、向こうで生きていられるかは分からない。都築の影響は大きい、返されたとしても、スパイの容疑がかかることは必至だった。
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