47人が本棚に入れています
本棚に追加
瞬が、虎の間で、本を読んでいると。海晴が空間転移で帰ってきた。
「ちょっと、上、通れないよ」
雪村と、亜里沙がしっとりと二人の世界なのだそうだ。
「まあ、あの二人、ここ以外で会えないでしょう」
その考えは甘かったのだと、瞬は次の日思い知った。
会屋の指摘で、亜里沙が妊娠していることが分かったのだ。相手は、雪村なのだろう。これが『神の御使い』に知られたら、亜里沙は強制送還されてしまう。
亜里沙が、護衛を止め『神の御使い』で子どもを産む事は仕方がないことだが、せめて雪村とハッピーエンドになって欲しい。
「海晴、【終末の旗】撤去したいのだけれど…」
海晴は、朝食を吹いていた。瞬から、亜里沙の事情は聞いた海晴だったが、組織を全滅するには、かなりの能力が必要になる。
「もしもだ、会屋がパワーアップして、組織のプロフィールが、読めるようになったらどうする」
それは、全てを隠ぺいしている、【黒術死】にとっては脅威だろう。
「会屋が、又、組織に襲われるね…」
【終末の旗】の後ろには【黒術死】がついている。【終末の旗】の構成員であっても、組織の全容を知る者はいないだろう。全容の分からない組織を、どう壊滅させたらよいのかは分からない。
「完全撤去には、その組織を知る能力が必要だね…」
会屋のパワーアップ、都築の顔が浮かんだ瞬は、非常に嫌な気分になった。
でも、全容が分からない組織を、撤去するには、知る方法が必要だった。
「でも、絶対に会屋には言うな」
瞬は、海晴に念を押す。
海晴が仕事に行き、瞬が予備校に向かう。予備校から、預かり屋に向かった瞬だったが、途中で雪村を見かけた。雪村は、まだ、亜里沙が妊娠していることを知らない。
「雪村さん」
瞬が声を掛けると、雪村が真っ赤になっていた。何を見ていたのかと瞬が、店を覗くと宝飾店だった。
「プロポーズですか?」
雪村は、真っ赤になって頷く。やっと雪村の、『死から来た者』での就職先が決まったらしい。農水産の現地を調査する、公務員になったのだそうだ。
仕事が決まったので、やっと亜里沙にプロポーズできると、雪村が言う。
「でも、亜里沙さん『神の御使い』なのですよ」
雪村は、『死から来た者』で、亜里沙も仕事を得れば、移住が可能になると調べていた。
しかし、既に護衛の任務に就いている亜里沙が、『死から来た者』で仕事を得る事は難しい。
最初のコメントを投稿しよう!