第1章

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 都築のように自らの権力と能力で、組織を変えさせることができる人物は少ない。  都築に頼りたくはないが、ここで役に立つ能力は都築なのかもしれない。 「心から愛していると、伝えたいなあ」  指輪と一緒に、花束もどうですかと、瞬は水島花店も紹介しておいた。  預かり屋に行くと、担当でもないのに、虎丸が来ていた。 「どうしました、虎丸店長」  虎丸、カウンターで深いため息を吐くと、モップを取り出し、店内の掃除を始めた。虎丸、考え事をする時、いつも掃除をしている。 「虎丸店長、『神の御使い』の時は助かりました、改めてお礼には伺いますが、ありがとうございました」  瞬は、虎丸の大好きな、天文屋のどら焼きをもって訪ねる予定だった。 「あのな、会屋が都築に会いたいと相談してきた…」  つられて、カウンターを磨いていた瞬の動きがピタリと止まった。 「子供の件。引き取って育てる手続きで、会屋は後ろ盾がないので、都築にお願いしたいと」  会屋も、あちこち相談してみたのだが、都築が一番適任だったのだそうだ。それには、瞬も言い返せない。 「それと、会屋の能力には続きがある。高めたいと…」  ビクリと瞬の肩が揺れる。 「それは、会屋は又、都築に抱かれるということですか?俺は、それは、反対したいのです…」  瞬と異なり会屋は、元々は『死から来た者』の住人ではない。瞬には、修業や経験により、能力を増してゆく傾向があるが、会屋が今後修行したとしても、伸びて行く可能性は低い。 「子供を育てるため、とでも、いうのかな」  虎丸も困っているようだった。今の会屋の能力でも、食べてはいける。しかし、今ならば能力を更に伸ばせる。年を取ってからでは、能力に体がついていかなくなる。 「会屋が本気で言うのならば、俺は、会屋に貸しをつくりたいからな、協力は惜しまないけどさ…」  瞬は、唇を噛みしめる。確かに、会屋が本気で思っているのならば、瞬は口出しできない。 「そう…ですか…」  虎丸は、会屋が都築と会うセッティングをすると、ポツリと呟いた。事前に瞬に言っておかないと、確かに、邪魔をしてしまうかもしれない。  瞬は、無表情で仕事を開始していた。虎丸は、手伝うと称して客と喋り、飽きたと言って帰って行った。  店仕舞いしようかという時間になり、ポツリと会屋がやってきた。瞬は、クローズの看板をドアに掛けると、会屋にイスを勧めた。
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