第1章

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 北神探偵社 余 『君を照らす月』 第一章 災難  自分は、もしかして、どこに行っても、災難体質だったのかと、高瀬 瞬(たかせ しゅん)は考え込んでいた。  瞬は、生まれは『死から来た者』という、通常の世界に隣接した組織だった。そこで、能力が低く追い出され、人間として育った。その後、自分は【御使い】という能力者で、『死から来た者』の敵対組織『神の御使い』で、保護している存在だと分かった。  そこで、『死から来た者』として今後生きてゆくために、夏休みを利用し『神の御使い』で御使いとは何なのか知ることにした。  『神の御使い』は、瞬を温かく迎え入れ、記憶の改竄なども、行うつもりはないと告げた。知りたいことを知りなさいと、ホテルの一室を貸し出してくれた。指定された、ホテルに行ってみると、まるで旅館のようで、一室は一軒だった。旅館の離れを貸し出してくれたのだ。離れには、キッチンもあり、食材も用意されていた。 「すごいね、瞬の料理好きもよく把握している」  風呂も、露天風呂だった。しかも、最近瞬が憧れている、畳の間だった。  障子を開くと、そこには、庭園があった。水が撒かれていて、ほんのり涼しい。  瞬は日本人という訳ではないが、和風の家が好きだった。 「くつろぐね…」  そこまでは、良かった。  真夜中の物音に目が覚めると、既に周囲は包囲されていた。突如現れた、不審な黒服の一団に、旅館は無視をしていた。もしかして、グルだったのかもしれない。  また、襲撃されてしまったのだ。しかも、瞬に同行していた護衛、田中 武蔵(たなか むさし)と一緒に、拉致されてしまった。  瞬を拉致した組織は、『終末の旗』と名乗った。人類は滅びるべきだと唱える集団だった。『終末の旗』、その母体は、『黒術死』と呼ばれる古くから存在しているが、内容が知られていない組織だった。  人間の未来を繋ぐ【御使い】を不必要とし、抹殺する予定なのだが、自分達への影響を加味して、未だ研究中と告げていた。そのため、瞬と武蔵は、すぐには殺されなかった。 「また、厄介な連中で、厄介な状況」  どこかの地下に閉じ込められているが、幸いにして、瞬は武蔵と一緒に閉じ込められていた。現在地は全く分からないが、分かったとしても『神の御使い』の土地勘はない。  こんな場所を出で、家に帰るかと思ったが、そこに、もう一人居たのだ。
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