第1章

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 黒猫、『死から来た者』の源を少し届けてくれたらしい。瞬と武蔵の、生命体とも呼べるものが回復を始めていた。 「このリュック怖いな…」  しかし、瞬のリュックがあれば、毛布もあるし、寝袋もある。まず、じっくり対策をたてることにした。 「まず、能力を回復させよう」  青年は、ゆっくりならば言葉を話した。名前は、三国 雪村(みくに ゆきむら)、一般の御使いで、組織に拉致されて、能力を抜かれていた。  御使い以外の能力は残っているが、抜かれたショック状態が続いているらしい。  御使いの能力は、一人が独占して使えないように、分散され撒かれていた。 「自分の、能力なので、近付けば、戻ります」  折角分散しても、雪村が動けば回収されてしまう。だから、雪村は地下に幽閉されていたようだった。逆に解釈すれば、撒いた場所が特定できれば、回収に行ける。 「御使いの能力が、キライというわけではないよね?」  武蔵が確認していた。通常では考えられないが、瞬のようなイレギュラーも居る。 「はい。自分の一部ですから」  雪村が、撒かれた場所を地図に書いてくれたのだが、広範囲だった。雪村、存在としては、かなり優秀だったようで、相手の動向を読む能力があったのだ。しかし、戦闘能力はほぼ無い。  『神の御使い』に戻るという手もあるが、そこには裏切り者が居る。雪村を拉致させ、瞬の拉致を手引きした人物がいるのだ。  雪村は、裏切り物の存在に気が付いてしまい、処分されるところだった。 「とりあえず、雪村さんを、御使いに戻そう」  でも、その前に、眠る。 「でも、すいません、一日中走っていたので、疲れてしまいました」  瞬と、武蔵は、疲れのせいか爆睡してしまった。敵の中でも、眠れる時には眠る。体力、知力を回復させるには、眠る事が一番だった。  相当疲れていたのか、瞬の目が覚めると丸一日眠っていた。 「食事、いただけますか…」  雪村の事を、すっかり忘れていた。慌てて、瞬は、非常食を雪村に渡した。栄養バーのようなものだが、一本で一日は持つ。瞬と武蔵も、栄養バーを齧りながら、周囲の確認をした。異常も、進入者もないようだった。  一日寝過ごしてしまったが、次の早朝から瞬と武蔵は、地図を睨んだ。  基本、洞窟には、雪村の張った結界がある。街中を走り、敵に見つかったら、戦闘せずに洞窟に戻る。瞬と武蔵がはぐれた場合も、洞窟で待ち合わせとした。
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