第1章

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 まず普通に、黒マントを着た、あやしい人物があちこち居るのだ。どうも、黒マントは礼服のようなものらしい。フードのあるマントで、他の組織にはないものだった。  他に、『死から来た者』には公共の乗り物がなかったが、普通の世界の、電車もバスも共有して使っている時が多かった。『神の御使い』では、転移能力者が、それぞれバスの役目をしていた。バス停はあるのだが、来るのは人ひとりという場合が多い。または、転移能力者と客が現れる。  バスの一人が、ビルを見上げて、何か叫んでいた。転移能力者が、すぐにビルの屋上に現れた。 「御使い様と、誘拐犯」  飛び起きた武蔵が、瞬と雪村の腕を掴み空間転移を行った。  転移先は、オフィスビルの屋上だった。風が強く、看板しかない。車イスが風で動きそうだったので、瞬が必死に捕まえている。 「狭いね…」  看板の土台は狭かった。しかし、そこから降りるにはハシゴになっていたので、車イスは降ろせない。 「ここは、転移能力者が多いからな…見つかった瞬間に移動しなくては、ダメだな」  その前に、まず、見つからない場所に空間転移しなくてはならない。  看板からは、遠くまでが見渡せた。電車は走っていないので、駅はないが、人の集まる場所はある。市場やショッピングセンターの周囲に、多くの人の気配があった。能力を早く回収するには、人の多い場所に行く方が効率は良い。 「夜、ショッピングセンターの屋根に行ってみるか…」  空間転移を繰り返し、雪村の回復を行っていたが、思わぬ展開がやってきた。 『ビルの上に居る、三人の天使を見つけると肩の荷が下りる』  きっと、御使いの能力を与えられてしまった人間が、雪村に能力を回収されて、楽になってしまったのだろう。御使いは生まれた時から能力を持っていれば気にならないが、途中から得てしまったら、辛いのかもしれない。  心を周囲に見透かされているような、恐怖になるらしい。  都市伝説のように、女子学生に噂が流れてしまった。皆、ビルの上を見上げて、探している。 「ビルの上は、もう、無理か?」  武蔵が、隠れて下を見ていた。天使が、警察に追われるか?と思うが、女子学生はそれすら、信憑性が高い噂と捕える。 「変装するか?」  瞬と、雪村が御使いである限り、誰にでも分かってしまうのが『神の御使い』であった。変装は意味をなさない。 「車の中にしてみるか?」
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