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しかし、空間転移で狭い場所に移動する場合、雪村の車イスが、ネックになってしまった。
「どうするか?」
結局、ビルの上をまだ転々としていた。
「瞬、御使いなのだから、違うという噂を流せよ」
そこで、やっと瞬は、今の現象が何なのか分かった気がした。瞬は、一般の御使い。心から思った事が、周囲に感染してしまう。
瞬は、『神の御使い』に来てから、凄い警察不信に陥り、その思いは周囲に流れてしまったはず。そのせいなのか、瞬や武蔵、雪村を追う者が、警察から一般市民に変わっていた。
『自分達の力で、御使い様を助けよう』
しかし、誘拐犯とされている瞬も、御使いなので、どこか矛盾している。
その矛盾が、都市伝説などという奇妙な噂を作ってしまうのかもしれない。
一旦洞窟に帰り、簡単な食事をしていると、いつの間にか、武蔵はテレビを見ていた。
「どうしたの、それ?」
いつの間に購入していたのか、ラジオも持っていた。
「瞬が御使いだと、気が付いた連中も出てきた。これは捧げものだと、置いてあった」
ビルに先回りして、捧げものをする者まで出てきたらしい。
「ややこしい…」
『神の御使い』の中でも、敵味方、保護と排除が入り乱れてきた。
次の日、ビルの屋上に空間転移すると、待ち構えたかのように、白服の男が現れた。どこから現れたのか不明だが、恭しく跪き、瞬と雪村を見ていた。
「御使い様、生で見るのは、初めてです…」
上目使いで瞬と、雪村を交互に見ながら、そっと近づいてきた。
「少し、触れてもいいですか…」
瞬の腕に手が伸びてきた時、武蔵が空間転移をかけていた。
「何だ、あれは?」
慌てたので出た先は、公園の森の中だった。森を抜けると、散歩している人が多く存在していた。
すぐに、場所を変えなくてはいけない。瞬が地図を広げた時に、再び白服が現れていた。上下白のスーツを着た男が、一人から五人に増えていた。
取り囲むように散らばりながら、徐々に距離を詰めてくる。
『神の御使い』なんて大嫌いだ、瞬の心の中の思いが、御使いの能力を発動させてしまった。散歩の人も、キャッチボールをしていた少年も、皆、瞬の方向を見て近寄ってきていた。
「御使い様…大嫌いなんて、言わないで…」
後ろから、制服を着た女子学生が二人現れると、白服を殴り飛ばしていた。
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