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1⃣
アタシ・こずえは、ひろつぐの家が全滅をした事件から1年間は名古屋でバイト生活を続けていた。
アタシは、生まれてから35年間各地を転々とする暮らしを続けていたけん、ひとつの街に定住すると言うことや恋をするよろこびなんかは知らへんねん。
アタシは、今までに何回離婚と再婚を繰り返してきたのな…
よく覚えてへん…
アタシは、2011年に発生した東日本大震災による巨大津波で、当時暮らしていた鹿折(ししおり・宮城県気仙沼市)の街が焼かれけん、ふるさとをなくしていた。
アタシは、あの日から20年間各地を転々とする暮らしを続けていた。
住むところとバイトを転々とすることばかりを繰り返していたけん、やさぐれの女になっていた。
メイクもドレスもランジェリーも派手な色ばかりを好むようになった。
お酒は、アルコール度がめちゃめちゃ高いお酒ばかりを好むようになった。
そしてアタシは、36歳になった。
東日本大震災が発生したあの日から20年間、アタシは乳房(むね)の奥にできた深い傷をかかえていたので、今も苦しみ続けていた。
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