”千里の道も一歩から”編_拾伍

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  その日は仕方なく、通勤に使っているスニーカーで1日を過ごした。 どうかしたの?、と佐野が心配そうに聞いてきたが、嘘をつく。 「昨日、間違えて置いてあるパンプスで帰ってしまって 気がつかずに来てしまいました。 ・・・こんな格好ですみません。」 佐野はにっこりと微笑む。 「いいえ、そんなことはいいの。 足でも痛めたのかと・・・ 大丈夫なら、いいのよ。」 ありがとうございます、と私は頭を下げた。 誰が何の目的で、あんなことをしたかは分からない。 それを見つけることに意味は無い。 ロッカーの合鍵を使える誰かが、それを悪用し 私怨を晴らそうとしたことは分かっている。 だったら、ロッカーを使わないだけだ。 私はそう割り切って、 靴とカーディガンをカバンの中に仕舞い込んだ。
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