不幸予告

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”お父さんが屋根から落ちた” その日の会社帰り。 携帯をチェックして 入っていたメールに驚いて、 慌てて電話を掛けた。 『もしもし。 あんたから電話なんて珍しいわね』   電話の向こうの、母の声は、 メールの内容に反して 妙にのんびりしている。 「えっ、だってお母さんから お父さんが屋根から落ちたって メールが……」 『ああ。 足滑らせて落ちるには落ちたけど、 雨樋に掴まって軽いねんざだけよ。 あーあ、修理代、 いくらかかるのかしら?』 「ほんとにたいしたことないのね?」 『ぜーんぜん。ぴんぴんしてるわよ』 「よかった」   ちょっと残念そうな母の声に 笑いが漏れる。 最近の母の口癖は 「宝くじが当たったら別れるのに」だ。
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