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他の生徒が勝手知ったる自分の学校とばかりに靴を脱いで上がっていく。やはりどこの学校も同じで、途端に気だるさが増していった。それがなんだかおかしくて、同時に緊張が解けてきた。
私は足取り軽くローファーを脱ぐと、既に与えられている下駄箱へ入れる。持参した学校指定の上履きに履き替え、服装を改めて確認しながら最初に行くべきところへ足を運ぶ。
外見も宮殿なら内装も宮殿ばりに広く複雑な造りのこの学校は、2年生でも迷子になるという。入学案内の時に聞かされた話なんだけど……どうやら冗談ではないらしい。
「…ここ、どこ?」
塵一つ落ちていない綺麗な廊下で、掠れた呻き声をあげた。
そう、私は迷子になってしまったのだ。まずは職員室に向かおうと、なんとなく見たことがある廊下を進んでいたところで、だ。
なのにいつまでたっても『職員室』と書かれた看板は見つからない。どころか、どんどん人気がない場所へ来てしまい、ついには渡り廊下を渡って別の棟へ足を踏み入れてしまった。
外は木々が生い茂り、太陽の光を和らげている。この棟は他と比べて窓が多いため、外と明るさは変わらない。むしろ落ち着くくらいの薄暗さ。人気のなさも手伝って、まるで森林の木漏れ日の中にいるみたいだった。
「なんだかいいところ…」
お昼寝ができそうだな、とあくびを噛み殺しながら中を覗くと、1つの大きな扉があった。その扉にある小窓から部屋の様子が見えたのだけれど、中はなんと、無数の本が詰まっていた。
「図書室…かな。ん?」
そして私は見た。無限の本でできてると言われても信じちゃいそうな空間。その窓辺に寝そべる、1人の生徒の存在を。
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