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学校の名前は光葉館(こうようかん)学園。校舎は引っ越した日に一度見に行ったことがあるのだけれど、恐ろしく大きく、そして綺麗な校舎だった気がする。…曖昧な言い方になったのは呆けてしまってよく覚えていないからです。
でも1つ覚えていることは、
「制服、変じゃないよね…?」
いい加減な服装で臨んでいい場所じゃないこと。
私はスカートの裾をバサバサと叩き、首を懸命に後ろに回してシワがないかチェックしていく。糸くずの一本でもついていたらそれだけで門前払いをくらいそうなのだ、念には念を入れなくては。
ついでに気合も入れ直すために頬を叩く。ペチン、と思いのほか間の抜けた音がした。最後に2本の三つ編みがほつれていないか確認してから再度歩き出す。
光葉館学園は私鉄に乗って5分のところにある。『中途半端な田舎』こと中津原市の都会サイドに、私の新たな学生生活の舞台があるのだ。
「はふぅ…」
私は再びため息をつきながら駅へと向かう。途中、古ぼけた民家と広大な田んぼ。それと絶滅危惧種の円筒形ポストを横切る。
鳥たちの大合唱に耳を貸す余裕もない私は、やたら急ぎ足で駅の構内へ入った。すれ違った駅員のおじいちゃんがギョッとしていたところを見ると、今の私は花の女子高生にはあるまじき顔なのだろう。
汗ばむ手でお金を滑らせながら切符を買って、軍隊の行進みたいな足取りでホームへ。私以外誰もいない黄色い線の内側で、過去最高の気を付けをして電車を待つ。
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