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数分もしないうちにやってきた電車に乗り込む。制服は違うけど同じ年代の学生と、疲れた顔をした社会人。私と同じ制服は見られなかった。
光葉館学園は決して人気のない学校というわけじゃない。むしろ名門校として有名なのだ。
ところで、何の分野において名門なのか?
それは『魔法』。
500年という途方もない年月を経てこの国…いや、世界に定着した技術。自然現象を凌駕し、科学の法則を無視した力。
その力を使いこなす人を『魔法士』と呼ぶ。そして魔法士を志し、魔法技術を磨く者を『魔学徒』と呼ぶ。
光葉館学園はそんな魔学徒を育成し、優秀な魔法士を世に輩出してきたのだ。
そもそも魔法というのは、今の世の中には欠かせないもの。工業の主柱を支え、産業を担い、法に逆らう悪を罰する。
その技術を高レベルで使いこなせる人をたくさん卒業させているというのだから、名門と呼ばれるのも納得だ。
そういえば1年ほど前、ニュースで学園の生徒が話題となっていた。名前は忘れてしまったけど、なんか大きな賞をとったとか。
他にも歴史の教科書に載ってもいいくらいのすごい人がいたという。
私がこれから2年間通う学校はそんなすごいところなのだ。私自身、そのことを光栄に思っている。
「だからって、素直に喜べないなぁ…」
私は電車の中だというのにたまらず呟いた。
編入試験に辛うじて合格できたのはとても喜ばしいのだけれど、合格したそのあとのことを考えていなかった。多分これから先、地獄のような学園生活が待っている。
なぜなら…
「魔法、使えないからなぁ…」
私は、魔法というものを知らないから。
いや、知識としては知っている。だけど、知っているからと言って魔法が使えるわけじゃない。
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