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魔法にはまず『魔力』が必要となるのだけれど、私にはその魔力が備わっていない。魔力を使いこなすところも大事な技術だというのに。
知識だけで技術が全くないのに、編入試験に合格してしまった。
それが今の私であり、最大の悩みの種でもあった。
魔法学校に通う人間は、知識はもちろん実践経験もある。それを前提としている。私のように魔法が使えないのに入学するなんて、そんなバカげた話はない。
魔法士を目指すのならば、遅くても中学生の段階で使えないと手遅れになる。なのに私は高校から(しかも2年生から)魔法士を志すことにした。そんな人、後にも先にも私1人だろう。
では、なぜそんな愚行(むしろ蛮行)に及んだのかというと、私の過去が大きく絡んでいる。あまり思い出したくもない、暗い記憶。
私は気を取り直すために大きく深呼吸をして、電車のアナウンスに耳を傾ける。
《間もなく、光葉学園前、光葉学園前。お出口は__》
聞きなれた車掌さんの声。編入試験ぶりとなる車窓の向こう側の景色。高いビル。多くの人で賑わう繁華街。遠くに霞む山。
それらが見えた途端、小さな心臓が悲鳴を上げた。一気に不安と緊張が押し寄せて、私をがんじがらめに縛り上げた。
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