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その時、一瞬にして目の前の景色が真っ暗になった。トンネルに入ったと自覚するのに数秒かかった。
「…あの時も、こんな風に真っ暗だったっけ…」
ふと、記憶がよみがえる。
蒸し暑い夜。充満する錆びた鉄の臭い。赤黒く染まった床と、そこに倒れ伏す少年だったもの。それを見つめるのは、ベッドの下で震える私と、
それから、血に渇いた、鬼__。
ゴウ!と電車がトンネルを抜ける音で、私は我に返った。景色は元通り、中津原の都会サイド。電車もすぐに停車して、降りる人と乗る人が交代していく。
いつの間にか流れていた涙を乱暴に拭い、下車する。
「こんなんじゃ、いけないよね…」
私は暗い過去に怯える心を奮い立たせ、もう一度頬を叩く。
「私、頑張るから、頑張って魔法士になるからね……夢人(ゆめと)」
誰にも聞こえないように。でも、神様には届くように、そっと宣誓した。
私が光葉館学園に入学し、一から魔法士を目指す理由。
それは3年前、私から友を奪った者への復讐のためだ。
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