第一章

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 薄暗い、光も届くのかわからない、鬱蒼とした森。  周りの木々は黒く、木の幹が異様に目立つ。  何か少し物寂しさを感じるそんな森だ。  森の中は、白い靄のようにおおわれている。  だからこそ、先までは見通せない。  森の中だけあって空気は綺麗だが、なんか不安にかられる。    俺はなぜかここにいた。なぜいるのかはわからない。  目の前にいるのは、エメラルドグリーンの目に白い長い髪、褐色の肌を持つ男。  着ている者は表地は白で、裏地は紫の着物だ。  赤紫色の帯が目立っている。  男の俺から見ても美しいと感じるそんな男だ。    俺に向って、その男は何かを言っている。  だが、俺は何もできない。  指に力も入らない。  そもそも何を言っているのかも、聞こえてこない。  無音の空間…。  なんだか変な気持ちだ・・・。  くらくらと眩暈がする。  もやもやと、自分ではない何かが体の中で蠢いているのがわかる。  ここにいるのが自分であって自分でない。  気持ちが悪い・・・。  なんだか、頭も痛い。  はきそうだ…。 「また会おう。友よ」 白い髪の男が、そう話す。  その言葉だけがなぜかはっきり耳に残っていた。  その顔はなんだか悲しそうであった。  男はいきなり、鋭い刀を抜いた。  動け・・・。  このままじゃ、やばい・・・。  祈るが全く体が動かさない。  その刀が宙を舞い俺に向って振り下ろされた。  俺はそのまま・・・。
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