第一章

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 図書館に向けて、校内を歩いていると一人の女がじっとこちらを見つめてきた。  全く見覚えのない女だ。  そももそ、友達もいない俺に目をむけるなんてありえないことだ。  まして、女なんて話しかけるどころか避けるのがオチだった。 「あなたは、まだここにいるの?」  銀色の長い髪が目立っている。  瞳も青い・・・まるで人形のようだ。  はっきり言って美少女に分類される顔立ちだ。  向けられる目は感情すら読めないが。  しかし、こんな女に見覚えがないのにこの女は何を言っている? 「君は誰だ?」  全くわかっていない。  そもそも人と話すのは苦手だ。  だからこそ、勇気を出してそう問いかけていた。  勿論蚊の鳴くような声しかだせなかったが… 「まだ思い出せないの?早くしないと異形の者がこの世界を暴れまわる。貴方のせいでね」  唐突な一言に呆然としてしまう。  なんだ?異形の者?  もはや訳が分からない。  俺夢でも見ているのか?  それとも、この少女がおかしいのか・・・。  そもそもなぜ、俺のせいだ。  意味不明な事に、理解ができない。  なんなんだよ。 「思い出せないって?記憶もあるし、そもそも意味が。大体、君は誰なんだ?」  俺はもはや、この女を睨みつける。  正直これ以上関わりたくないし、逃げ出したいと思っていた。  そんな俺の反応に女は深いため息をついた。  まるで、俺の事を呆れているかのようだ。  こっちとしては勝手に来て変な事を言い出す、あんたが迷惑なんだけどな。 「龍神の巫女・・・まあ、あなたに言ってもわからないわね・・・」  呆れたように、巫女はそう言った。  そんなことを言われても・・・  わからない・・・  そもそも龍神って、あの龍神なのか?  水の神様で、よく雨ごいなどに出てきたりする。  それの巫女? 「なんだよ。わけがわからない」  そのままため息をついて、巫女は消えて行った。  それを見ながら僕は、本当に訳がわからなかった。 「夢でも見てたのか?」  人がいなくなること自体ありえない。  周りをみたが、綺麗にいなくなっている。  しばらく俺も動けなくなっていた。
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