第一章

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 何かわからない出来事に、残りの講義も上の空になってしまった。  元々自分の好きな事については勉強も苦でないのだが…  こんな事本当に初めてだった。  あっという間に時間がたち、気付いたら全ての講義をおえていた。  俺は訳もわからないまま、大学を後にする。  帰りの自転車がやけに重く足がなかなか進まない。 「ああもう、考えても仕方ない」  あれは夢だったとしか思えない。  そうやってとにかく家路に急いでた時だ、さっと黒いフード付きのローブを羽織った一団が現れる。  服も黒く、全身黒づくめになっている。  胸に輝く銀でできた逆五芒星のネックレスが印象的だ。  無視して通ろうと思ったが、何やらそいつらがぶつぶつ呟いている。さらには俺の周りを取り囲んでしまい、身動きが取れなくなってしまった。 「ちょ、どいてください」  あんま喧嘩や争い事は嫌いな上、そもそも人と関わりたくない俺にとってこの状況は、苦痛でしかなかった。  そんな俺の事を無視して、なにやらぶつぶつと呟き続けている。 「召還」  唯一理解できた、そいつらのその一言によって、俺の目の前に理解できない現象がおこった。  緑色の肌の色。  一本角をもつ、子供サイズのそいつがじっと俺を見つめてくる。  このありえない状況に、俺の思考回路は停止した。  なんせシュウシュウいいながら、こっちに近づいてくる。  そうなったとき、やっと理解できた。 「ば、化け物だ」  俺は叫びながら、自転車を走らせる。周りを取り囲む黒ローブたちをはねのけるように。  だが、その黒ローブたちが次々に俺を掴んでくる。 「離せよ。化け物が来てるだろ」  俺は必死に暴れまわった。  ここで逃げなければ、襲われてしまう。  黒ローブたちの力が恐ろしいほど強く、一向に振りほどけない。 「なんなんだよ。お前ら。俺をどうするつもりだ」  本当に厄日だ。  遅刻しそうになるし・・・  変な女には絡まれるし・・・  なにより、こいつら…なんなんだよ。  そんなことを俺が考えている中、どんどん化け物が近づいてくる。  もはや獲物は俺だと言わんばかりに、口元からよだれを垂らしながら…  気持ちわりい。  そもそも、いやだ。  こんなとこで人生終わりだなんて。  確かに、ずっと姉ちゃん以外俺を知っている奴なんていないだろうけど、それでもまだやりたいことだってあるんだ。  そうやりたいこと…  
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