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「わかるわけない。ただ家に帰ろうとしたら襲ってきたんだ」
そう言うしかない。そもそも、目の前に平然といるこの少年が何者かもわからない。
そんな状況で、どうすりゃいいのかも全くわからない。
「そうか…あ、僕は犬山守人(いぬやまもりと)。この近くにある犬山神社の神主の息子。ああいう妖怪やら魑魅魍魎の類を送り返している。あんたは?」
神社の神主の息子?
魑魅魍魎を送り返す?
訳が分からない。
でもまあ、本当に助けられたことだけはわかっている。
「俺は十六夜黄泉。大学生だ。…あいつら魑魅魍魎なのか?」
俺の言葉に、守人はため息をついていた。
これだから素人は…
そんな顔をしている。
「あれが人に見えたのか?ある意味凄いな。あんた」
な・・・
そんなことわかるか。
人に見えたというか、普通人だと思うわ。
内心そんなことを思いながらも口にはしなかった。「そんなこと言われても信じられるか」
そうだ…
第一、急にだ。
どう信じろというんだ。
「現に狙われてんだ。自覚したほうがいいぞ」
少年らしからぬ目を向けながら守人はそう言っていた。
俺はその目を耐え切れずそらしてしまう。
「自覚とか言われても、わけがわからない」
なんでこんなに怪しいことに巻き込まれるんだ。昨日までは平和に暮らしていたんだ。姉ちゃんと二人だけど。
それに、こんなこと今までに経験ないはずだ。
「まあ、そっか。通常はそうなるか…でもな、あんたを襲ってきた連中は、あきらかにあんたを狙ってる。何かあんたに秘密があるという事だろうな」
「秘密…全く身に覚えもない。第一、君はなんであんなの見ても落ち着いてられる」
その言葉に、守人は笑っていた。どこか馬鹿にされているそんな笑いを浮かべていた。
「さっき言った通り、僕はあいつらを送り返すもの。慣れているんだよ、ああいう連中相手するの」
「ああいうのってそこらへんにいる者なのか?」
「いることはいるが、まず姿を現さないんだけどな。それに集団で動くなんてあんまり経験したことがない。…そういやあ、ああいう類が出る前に前兆があるはずだ。変な夢を見たりとか、何かをみたりとかなかったか?」
変な夢…今日の朝遅刻しかけたあの訳の分からない夢か。何かをみるは、思いっきり見たし話して、そのせいで変な気分になっているし。もやもやする上に、気分も悪い。
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