第一章

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「わかるわけない。ただ家に帰ろうとしたら襲ってきたんだ」  そう言うしかない。そもそも、目の前に平然といるこの少年が何者かもわからない。  そんな状況で、どうすりゃいいのかも全くわからない。 「そうか…あ、僕は犬山守人(いぬやまもりと)。この近くにある犬山神社の神主の息子。ああいう妖怪やら魑魅魍魎の類を送り返している。あんたは?」  神社の神主の息子?  魑魅魍魎を送り返す?  訳が分からない。  でもまあ、本当に助けられたことだけはわかっている。 「俺は十六夜黄泉。大学生だ。…あいつら魑魅魍魎なのか?」  俺の言葉に、守人はため息をついていた。  これだから素人は…  そんな顔をしている。 「あれが人に見えたのか?ある意味凄いな。あんた」  な・・・  そんなことわかるか。  人に見えたというか、普通人だと思うわ。  内心そんなことを思いながらも口にはしなかった。「そんなこと言われても信じられるか」  そうだ…  第一、急にだ。  どう信じろというんだ。 「現に狙われてんだ。自覚したほうがいいぞ」  少年らしからぬ目を向けながら守人はそう言っていた。  俺はその目を耐え切れずそらしてしまう。 「自覚とか言われても、わけがわからない」  なんでこんなに怪しいことに巻き込まれるんだ。昨日までは平和に暮らしていたんだ。姉ちゃんと二人だけど。  それに、こんなこと今までに経験ないはずだ。 「まあ、そっか。通常はそうなるか…でもな、あんたを襲ってきた連中は、あきらかにあんたを狙ってる。何かあんたに秘密があるという事だろうな」 「秘密…全く身に覚えもない。第一、君はなんであんなの見ても落ち着いてられる」  その言葉に、守人は笑っていた。どこか馬鹿にされているそんな笑いを浮かべていた。 「さっき言った通り、僕はあいつらを送り返すもの。慣れているんだよ、ああいう連中相手するの」 「ああいうのってそこらへんにいる者なのか?」 「いることはいるが、まず姿を現さないんだけどな。それに集団で動くなんてあんまり経験したことがない。…そういやあ、ああいう類が出る前に前兆があるはずだ。変な夢を見たりとか、何かをみたりとかなかったか?」  変な夢…今日の朝遅刻しかけたあの訳の分からない夢か。何かをみるは、思いっきり見たし話して、そのせいで変な気分になっているし。もやもやする上に、気分も悪い。
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