第一章

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 なんかスッキリしない気分がずっと続いているんだ。 「両方ともある」 「なんだ、じゃあそこに何かあるってことだ」   何かか・・・  でもこんな話なんてしたら、かなり笑われるかもしれない。自分でも馬鹿げた話だとそう思っている。  まあ、あんな怪しい連中を相手しているなら、もしかしたら聞いてくれるのか?  俺は覚悟して話し始めた。まあ、常人じゃあいかれていると思われるかもしれない。 「何かと言われても変な夢では自分が刺されるし、変な者は龍神の巫女とか名乗るし、もう訳が分からない。…こんな、馬鹿みたいな話は笑われるよな」  そう言って、守人の顔をみたら、驚いたのだが真剣な顔をしてこちらを見ている。じっと見つめてなにやら考え込んでいる。 「龍神の巫女だと言ったな」  龍神の巫女を知っているという事なのか? 「ああ、龍神の巫女と名乗る銀色の長い髪に青い目の女が現れて、変な事を俺に言ったと思ったら、また姿を消したんだ」  その言葉に守人は、じっと俺を見つめてくる。 「本当にそう名乗ったのか?」 「だから、本当だ。なんだよ?」  こういう奴とできれば相手したくない。第一、本当はこうして人と話すのも好きじゃないんだから。人と話せば、何かしらに巻き込まれる。そうやってろくな目にあってこなかった人間を何人も見てきた。  だから、俺としてもこんなに話したのは久しぶりだ。  無理に輪に入らないでも生きていけた。それを悲しいと思ったこともない。そういうもんだと俺は考えている。 「僕の家に来るか?」  いきなりの言葉に思わず俺は唖然となる。 「なんで、いきなりお前の家に行かないといけない」  説明がないため、何の事かも理解が不能になっている。 「あ、そっか。またやってしまった。さっき言ったろ、僕の家は神社だ。つまり龍神の史料もある。何かわかるかもしれないと言いたかったんだ。…最近あんましゃべってなかったから、慣れてなくてな」  俺と同じ類なのか?  しかし、ざっくばらんに話していると思っていたけどな。 「そういうことなら、行ってみる。俺は歴史とかそういうのは好きだから。史料をよむのは得意だ」  日頃の勉強が役に立つ日がくるとは思ってもみなかったが。確かに訳が分からないけど、生の史料を目にする機会なんて、至福ものだ。読むだけで本当に楽しい。  そんなことを考えるだけでよだれが。  
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