第3章

2/6
前へ
/13ページ
次へ
「鈴木くん、この資料を科学準備室までよろしくね」 山積みの課題を僕の目の前におき、学校でも評判の悪い女教師は去っていった。 「…今日に限って」 その小さな呟きは、誰の耳に届くことなく静寂の彼方へと消えた。 「…くっそ、」 悪態をつきながら僕は前へと足を進める。 高さがわりとあるお陰で前は見えづらい。 だけど、なんとか、なんとか僕は頑張った。 「…どうしよう」 そんな僕に、最後の難関。 両手が塞がっていて、扉のドアノブが捻られないんだなぁ…、これが。 下に一回置けばいい。 ―――却下。屈伸運動しんどい。 頑張って捻ってみるのはどうだろう。 ―――却下。今の僕には不可能である。 すると、答えはひとつ。 「あのー、このドア開けてくれませんか?」 僕は、すぐそこを通りかかった青年へと声をかけたのだった。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加