第1章

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結局、みんな2杯ずつ飲んで、食事を終えると、駅で解散した。 「明日から年明けまで忙しくなるから、二人とも、よろしくな!」 「はい!」「店長ご馳走さまでしたー!」 駅の前のロータリーに大きいクリスマスツリーが立っている。 何色もライトアップされたイルミネーション。 世間はもうすぐクリスマス。 クリスマスがきても、ミユキと瑠衣を独占する事は出来ないんだろうから、きっと独りで過ごすんだろう。 去年は、クリスマスケーキを買って無理矢理ミユキのマンションに押しかけたっけ。 オレはいつでも、強引で。 ミユキの隙あらば、心に入り込もうと必死だった。 だけど、 どんなに尽くしても、 誠実に接しても、 リューマにはいつも敵わなくて。 なんでアイツは再び現れてしまったんだろう。 ミユキもリューマに対しての昔からの執着は凄いけど 女に困るはずのないリューマが、あんなにもミユキに必死になるのも、ずっと理解出来ないでいた。 映画に出ていたロシアンアサシン役の女もすげー美女だったし、前のデザイナーの元カノだって、男を虜にしそうな美女だった。 そうゆう取り巻く女達と適当に遊んでいればいいのに 軽い男と思いきや、ミユキだけは決して手放そうとしないリューマ。 ミユキを運命の女だと言い切ったリューマ。 あの二人に入り込める隙間がオレにはなくて 赤い糸が存在するなら、きっとあの二人は がんじがらめに絡み合っているのかもしれないと 不覚にも思ってしまう。 じゃあ……オレはどうなんの? 「♪♪♪♪♪♪」 携帯が鳴って、何の根拠も無しにミユキからかも……と、慌ててポケットからスマホを取り出した。 表示画面を見れば 綾野 晴美。 さっき別れたばっかりなのに、どうしたんだろう……?と電話に出れば、綾野のすすり泣く声がした。 「店長……」 「どうした?」 なぜ、綾野が泣きながら電話をかけてきているのか、見当もつかない。 さっきまでは、ほろ酔いのテンションで別れたと言うのに。
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