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「ミユキも、これから先ずっと父親の事で悩むと思うし、わだかまりになってずっと残るよりはハッキリさせてた方がいいと思って。」
リューマは目の前で交差さている手を額にやって、辛そうに瞼を伏せた。
リューマ……きっと相当悩んだんだろう。
顔色が悪くて憔悴しきっている。
ミユキの腹の子の父親が誰なのか……
知れるものなら知りたい。
だけど……
「ミユキを勝手に連れて行くなんて言われて、DNA鑑定をしたところで、オレに何のメリットもないんだけど」
「…………」
「腹の子がオレの子なら、ミユキはやらない。
ミユキにとってオレは、瑠衣を面倒見てきたっていう信頼があるんだ。
オレもミユキを説得させてみせる。」
オレがキッパリ言ってのけると
リューマはしばらく眉をひそめて考え込んでいた。
長い間沈黙が続いて、オレはホットコーヒーを注文した。
コーヒー豆の煎る香ばしい香りと共に、マスターによってコーヒーが運ばれてくる。
ダンマリとしたリューマを見つめながら、コーヒーを啜った。
リューマも置いていた冷めきったであろうコーヒーカップを手に取り、流し込むようにして飲み干すとやっと口を開いた。
「とりあえず……腹の子をハッキリさせよう。
ミユキもそれで何か決断出来るかもしれないし。最終的にはミユキが決める事だから」
「ああ、そうだな。DNA鑑定する事、ミユキは承諾してるのか?」
「まだ……話をしていない。これからする。だからミユキの家に行くけど、とやかく言わないでね」
「…………」
「ミユキに嫌われないようにな。
DNA鑑定なんて、女性側からしたら屈辱的な事だろ」
オレの皮肉めいた忠告に、リューマはビクリと小さく肩を揺らして動揺を見せた。
「そんなん、分かってるよ。」
リューマは財布を取り出すと二千円をテーブルに置いた。
「じゃ、これで会計しておいて。オレはミユキの所に行く」
「妊婦を襲うなよ」
「ふ。ヨシじゃないんだから」
リューマはオレを軽く睨んで、さっさと店を出て行った。
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