第1章

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ヨシに迷惑かけたくないと思うけど 急に襲ってくる吐き気はどうしようもなくて、どうにも出来なかった。 でも仕事は責任持ってちゃんとやりこなしたい。 私のお腹の中で育つ私の赤ちゃん。 初めは妊娠した事に戸惑って、泣いてばかりだったけど 苦しいつわりでも、赤ちゃんを授かった事が嬉しく思えるようになってきた。 欲しくても授かれない女性もいる中、 瑠衣の兄弟を宿す事が出来て幸せだ。 リューマとヨシに頼らず育てていければ いいだけの話。 どっちかについてしまうから 父親の事で悩むんだ。 父親がいない家庭で、瑠衣とこの子を育てていくのは不憫だけど 私のエゴだけど 愛情は名一杯注いであげられる。 「瑠衣ー、ゴハン食べるよ」 夕飯の支度が済むと、ヨチヨチ歩き回る瑠衣を捕まえる。 「あーもう、何お口の中に入れてるの?」 瑠衣の唾液でベトベトになった私のリップ。 口に指を入れて、無理矢理リップを取り出して、怒った顔を作る。 顔を近づけて 「ダメでしょ、お口に何でも入れちゃ!」 オデコ同士くっつけて睨み利かせるけど瑠衣は面白がって、きゃっきゃっ笑うだけ。 そうやって瑠衣と戯れていると、 玄関で呼鈴のブザーが鳴った。 「…………」 瑠衣を抱きかかえたまま、玄関に近づきドアスコープで訪問者を確認すると リューマだった。 5時に瑠衣を迎えに行って別れてからまだ数時間しか経ってないのに どうしたんだろう。 リューマと会うのはすごく辛い。 好きな気持ちを抑えきれなくなるし それに 最近リューマは、日に日に表情が暗くなっていた。 私の妊娠を喜んでいないのは 明らかで……。 だから瑠衣を預ける毎日も辛かった。 リューマの傷ついてるような顔をまともに見れなかった。 しばらくドアを開けるのを躊躇していると ドア越しにリューマの声がした。 「ミユキ、開けて。大事な話があるから」
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