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『帰って』って無下に言えないくらい、
リューマの声は真剣だった。
会ったら辛くなるのに……
傍にずっといて欲しいって思ってしまうのに……
私は玄関のドアを開けた。
数時間前に会ったばかりのリューマが目の前に立っている。
リューマの存在を意識しただけで
胸が切なくギューと締めつけられる。
「入っていい?」
リューマは遠慮がちに私の顔を伺った。
「うん」
リューマは靴を脱いで部屋に上がると
抱いていた瑠衣に手を伸ばして
私から取り上げて抱きかかえた。
「瑠衣、ゴハン食べたのかー?」
「ぱーぱ……ぱぱ……」
「お前は良い子だな。本当に。やんちゃの時は困るけど」
リューマは瑠衣に頬ずりをする。
リューマの息子への愛は、疑う余地はない。
なのに……
瑠衣とリューマを引き離す選択をしていいんだろうか……
そんな考えが浮かんで慌てて打ち消した。
それを考えるから
いつも八方塞がりになるんだ。
お腹の子は……ヨシの子かもしれないんだから。
苦しい感情が込み上げてきて
無意識に胸に手を当てる。
リューマは瑠衣を抱いたまま、ソファに腰かけた。
「リューマ、ご飯出来てるけど一緒に食べる?」
「まだ食べてなかったの?オレはいいよ。腹減ってないから。
ミユキ食べて。オレ瑠衣に食べさせるから。」
私はダイニングテーブルに料理を並べる。
肉じゃがに煮込みご飯。
リューマは瑠衣に手慣れたように食べさせる。
「瑠衣、オレの言うことをだいぶ聞くようになったんだよ。だから育児もだいぶやりやすくなった。日中ずっと瑠衣といるし、ミユキよりもしかしたら、オレの方に懐いてるかもね」
得意気に笑うリューマの屈託のない笑顔ににキュンとしながら
私も笑い返す。
「リューマが、めげずに瑠衣の面倒見てくれてるからしょうがないかな。
でも父親と母親、別物でしょ。与える愛情って」
私がサラリと言った事にリューマが食いついてきた。
哀しみを含んだ瞳で真っ直ぐ私を捕らえて。
私、今……矛盾した事言ったかも……
「そう言うなら……オレから瑠衣を奪うなよ。
二人で瑠衣を育てるべきだろ?」
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