第1章

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DNA鑑定でもし…… オレの子だと判明したら…… ミユキはオレに靡く事はあるんだろうか。 ……もしなかったとしても ミユキは、リューマと一緒に渡米するのを断念するかもしれない。 それでも、ミユキがアメリカに行ってしまったら…… その時は、とうとうミユキを諦めなければいけないんだよな。 焦燥感に苛まれて、苦しさ覚え、つい眉間にシワが寄る。 リューマがミユキの所に行くと言って出ていってから オレもコーヒーを飲み干すと、リューマが置いていった二千円でお会計を済ませて店を出た。 サロンを見れば明かりがまだ点いていて、綾野と吉田がトレーニングで残っている様子が伺えた。 真っ直ぐ帰っても、真っ暗な部屋がオレを出迎えるだけだし、 二人のトレーニングを見ていくか。 サロンの玄関のドアノブに手をかけて中に入っていくと、スタンドにウィッグを立ててトレーニングしている二人の姿があった。 二人はここを担っていく戦力だから、こうやってスキルアップのトレーニングを率先してやってくれる事は、本当に心強い。 「あ、店長! 何で本橋ルイがウチのサロンに来たんですか?」 最近ずっと元気なくて暗かった綾野が、リューマの出現で、やたらテンションが高い事に、少しイラつく。 きっとそれはリューマに対する劣等感がイラつきを煽っているんだろうけど。 「オレもまさかと思ったんすけど、リアル俳優本橋ルイ、ヤバイっすねー!同じ男とは思えないくらい顔がフェミニン!」 吉田も乗っかって、リューマを絶賛し始める。 「ヤツの事はいいから、トレーニングに集中しろよ」 大人げなく、不機嫌なオレが全面に出てしまって、 二人は押し黙って、ウィッグに集中し始めた。 相当険しい顔で二人を睨んだに違いない。 9時半を回ったくらいで、トレーニングは終了し、 オレは二人を夕飯に誘った。 家帰っても、メシはないからな……。
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