”千里の道も一歩から”編_弐拾漆

10/13
前へ
/40ページ
次へ
  それでも、私は顔を上げることが出来なかった。 止め処なく流れ落ちる涙を俯いて隠し、 片手を強く噛んで嗚咽を必死に堪える。 ・・・今、蓮に甘えたくなかった。 ・・・流されたら、もう後戻りが出来ない、と分かっていた。 蓮は私の下ろしたまま、 握り締め過ぎて真っ白になった手を掴んだ。 ビクッと体が勝手に反応する。 蓮は悲しそうに私の手をそっと離して、 私のコートのポケットに紙を入れる。 「・・・これ、僕の連絡先。 いつでも構わない・・・。連絡、待ってる・・・」
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加