”千里の道も一歩から”編_弐拾漆

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  その時、蓮が伸ばしてきた手を私は払いのけた。 「からかわないでっ!」 つい、大きな声を出してしまい、蓮は悲しげに手を引っ込めた。 私は震える声で自分でも根源すら分からないのに、 湧き出す苛立ちを自分勝手にぶつける。 「東京、行っちゃうんですよね?? なのに、なんで、そんなこと言うんですか? それに、江守さんは有名なピアニストなんですよね? そんな貴方と私が釣り合う訳無いじゃないっ! どうせ・・・、 どうせ、あっという間に私の前からいなくなっちゃうくせに なんで、そんなこというのっ・・・ なんで、そんなヒドイこと・・・」 私は勝手に零れ落ちた涙を子どものように手で拭った。 蓮は悲しそうに手を伸ばしたけど、私はそれを拒んだ。
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