3S・1M・クールビズ

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「コウハ!?  え、長野に転勤になったんじゃなかったのっ!?」  私はその突進を、華麗によけた。  ……いや、だって、私とコウハだと基礎体力が違うから。  まともにくらったら、私が体ごと吹っ飛ぶことは明白である。 「そうですよー。  転勤になりました、長野」  私のツレない反応にもめげずに、コウハは俊敏な運動神経を生かして私の前に回り込んできた。  激突しそうになった壁を軽やかに蹴って方向転換をしてくるあたり、さすが『職業:全国転勤する狛犬(自称)』である。 「長野に転勤になってすぐ、転勤先の神様から『鳥居に取り付ける神額を新しくしたいから、どうにかしろ』って無茶ぶりされてしまいまして。  それで、遊仙さんに依頼させてもらったんです。  今日が引き渡し予定日でして」  コウハを御師様に紹介したのは、実は私だ。  コウハは私の古い友人で、狛犬見習い時代、生活費を稼ぐために皆星会でアルバイト文士として働いていた頃に知り合った。  ちなみに犬耳犬尻尾が本物なのか、文士能力で発現されたコスプレなのかは、私も知らない。  『職業:狛犬』である彼に向けてはいけない質問だと思って、胸の奥にひっそりとしまい込んでいる。
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