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「はぁ……
京都から転勤になって早々、大変なことで」
目の前でブンブン尻尾を振るコウハの頭を撫でながら、御師様にじっとりとした視線を向けた。
もちろん、『仕事終わってんだろうな? あぁん?』という催促の視線である。
そこでふと、いまだに黙々と亀甲縛りを敢行している美女に目がとまった。
荒縄はいつの間にか、美しい結び目を作り出している。
コウハのお連れ様なのだろうか?
「……あら、わたくしったら、夢中になってしまって。
お恥ずかしい」
その人は私の視線に気付くと、手を止めてはんなりと頬を染めた。
ちなみに御師様はそんな美女の後ろでハァハァしている。
もちろん、荒縄に悶えているのであって、美女に悶えているわけではない。
「わたくし、仙冬可と申します」
そう名乗った美女は、帯の間から紙を取り出して渡してくれた。
そこには『俺の股間はクールビズ 仙冬可個展』という文字とともに、活けられた花や流麗な筆致で書かれた短歌の写真が載せられている。
「今度個展に展示する歌扇を、遊仙さんに依頼しておりまして。
今日が受け渡し日だったのですが……」
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