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その瞬間、私の喉をものすごく低い声がすり抜けていった。
まさしく『地を這うような』と表すにふさわしい声に、畳の上を芋虫のように這っていた御師様がビクゥッと飛び跳ねる。
「この期に及んで……
何しようとしているんですか?」
Mムシと化した御師様が向かう先には、文机があった。
その上に置かれているのは、御師様がお返事エッセイを書く時に使う和綴じの帳面が乗せられている。
そこに踊る文字は、まだまだ墨痕鮮やかで、まるでつい先ほど書かれたかのようで……
「……まさかとは思いますが、仕事そっちのけでお返事エッセイを書いていたとか、まさかありませんよね?」
「こ……胡蝶!!
落ちけつっ!!
力漏れてる……っ!!」
「まーさーか、
……ありませんよ、ね………?」
ゴゴゴゴゴゴ……という音ともに、私の周囲を幻惑の光が舞う。
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