第5章 道端に小石

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僕はある女の子に恋をしている。いや、片想いと言った方がいいだろうか。 僕の名前は小道進。何だか小さな道を歩くみたいな名前だが、親が付けたものなので仕方ない。 僕はとある高校に通う、ごくごく普通の男子高校生だ。背もそこまで高くなく、体つきも痩せている方だ。顔も髪型も普通で、別段人気でもなく、かといって虐められてもなく、特に変わった所はない。 ああ、自分の事ばかり話していた。僕の片想いの相手の話をしないと。 彼女の名前は川端咲希。同じ中学、高校でクラスメイト、正直言ってかなりの美人だ。これは僕でなくてもそう思うだろう。 背中まで伸びた黒髪を縛り、ポニーテールにしており、眉は細く目は切れ長でクールな印象を受ける。背は僕と同じくらいだろうか、痩せすぎずしかし太っておらず、胸も同学年と同じか少し大きい程度だろう。さらに容姿端麗で文武両道、勉強も常にトップで剣道部では天才と呼ばれ、全国大会も何度も出ており、また性格も誰にでも優しく真面目でしっかりしていて……。 ついつい話しすぎてしまった。そのぐらい彼女はかなり完璧で、そして誰もの憧れだ。常にバレンタインはチョコを貰い、下駄箱にはいつものようにラブレター、そんなどこかのアニメのヒロインのような存在の彼女に、僕は中学の時から恋をしているのだ。 しかしそれと同時に彼女へ想いは届かないとも思っていた。彼女は毎日のように告白されては(男女問わず)それを断り続けていると聞いていた。恐らく好きな人がいるのか、ただ断っているだけなのか、それとも……。あくまで噂だが僕には無理だと思った。 まず女の子ともろくに話せないのだ。時々彼女が話しかけてくるのだが、なぜか緊張して舌が回らなくなり、汗をかいてしまう。そして彼女がどこかへ言ってしまうと、話せなかった自分をふがいなく思うと共に酷く後悔するのだ。 そしてそんな日が毎日のように続くのだ。登校して、彼女を見て、何も話せず、時々あっちが話しかけても特に何もなく、下校時間になって後ろ髪を引かれる思いで帰宅する。その繰り返しである。 しかしそんな日常が壊れてしまうのはいやで、しかし何もせずにはいられなく思う。しかし何もできない。そしてこう思うだ。 僕、小道進は川端さんに恋してる、と……。
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