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そんなある日だ。僕はいつも通り、後悔の念を抱きながら帰り道を歩いていた。
「はぁ、また今日も話せなかったなぁ……。どうすれば川端さんときちんと話せるのだろうか……」
ため息混じりに僕は呟く。しかしそんな愚痴をこぼしたところで何か変わるわけでもない。そんなことで変わるなら僕だって気が晴れていることだろう。
(やっぱり諦めた方がいいのかな……、僕なんかにはやっぱり駄目なのかも……)
そんなことを考え、ふと何気なく僕は足元を見た。するとそこには石ころが1つ転がっていた。
「何だ?石ころ、か?」
僕はいつもそれを拾って見てみる。何のへんてつも無い小石。そこら辺に落ちていても何の違和感もない、ただの石ころだ。そう、ただの石ころなのだが……。
(何だろう、何故か離したくない。むしろ持っていたい気分になってくる。どうなってるんだ……?)
僕は小石を遠くに放りたいと思いながら、手がまったく動かなかった。しばらくそのままになっていたが、人の話し声で僕ははっと我に返った。ふと回りを見ると同じ高校の生徒だろうか、一組の男女が話をしながら歩いているのが見えた。
僕はまた右手を見る。そこには小石があった。
「な、なんだったんだ今のは……。と、とにかくもう帰ろう!」
そう言うと僕は小走りで帰り道を帰った。途中で特に誰かに会うこともなく、誰かに追われることもなく、そのまま家に辿り着けた。
「着いた……、って石ころも持って帰ってきちゃったよ。どうしよう?……まあいいや、捨てられないのは何かあるからだろうし、持っていて別に悪くはないだろうし」
僕はそのまま小石を机の上に置いた。石は先程より少しだけ輝いて見えた。
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