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あれから数日、僕はまだあの石を持っていた。
あの日から多くの人と話した。すると意外に楽しいと感じ、何となく悪い感じはしないと思い始めていたからだ。
たくさんの人と話す、それはもしかしたら楽しいことなのかもしれない。しかしそれと同時に僕は何か違和感を抱いていた。
そう、何か違うと。”僕は本当にそう望んでいるのか”、と。本当はもっと違うことを願っていたのではないか、と。
しかし僕は首を振りそれを振り払う。
(違う、僕はこの自分を変えようと思っているからこの石を授かったんだ。決して誰かに好かれようとか、そんなのではない、はずだ!)
僕はそう考えるのだが、何故か納得できない。心のどこかでそれを本心だと認めきれないのである。
(何なんだこれは?僕の願いは、人と話せることじゃないのか……?)
うーんと考え込む僕。その時、誰かとぶつかった。
「あ……!すみません!怪我はないですか?」
「ん?ああ、怪我は無い。そっちこそ大丈夫か?」
僕が謝りながら言うと相手は平気そうに答える。相手は僕と同じ1年生のようだ。無造作に整えられた髪に少し冷めたような目、そして何より目を引くのは鼻に横一文字に付く傷だ。
(や、やばい……。かなり恐い人とぶつかっちゃったかも……)
僕がそうおののいていると、彼は僕の足元を指し示し、
「それ、君のか?俺は持っていなかったから違うと思うが」
その言葉に僕も自分の足元を見る。するとそこにはあの小石。どうやら先程ので落としてしまったらしい。
「あ、ああ!そうです、僕のです!いやぁ、無くしたらどうしようかと……」
そう笑いながら拾おうとした、その時。ふとあることが蘇った。
それはある人の顔だ。女性の顔だ。どこかで見たような顔だ。そしてその顔を見ると何故か今まで考えてた事が吹き飛び、胸のつっかえが取れた。
ああ、そうだ。僕は大事なことを、人を忘れていたんだ。そう、僕の願いは多くの人と話すことではない、彼女に思いを伝えること。
(そうだ川端さん……。僕は川端さんに想いを伝えなくちゃいけないんだ……!それが僕の本心なんだ!)
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