第5章 道端に小石

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その日の放課後、僕は剣道場の近くに立っていた。 もちろん目的は1つ。川端さんに想いを伝えることだ。それ以外は何もない。 もうあたりが暗くなり始める。日がだんだんと暮れ部活終わりの生徒たちが続々と帰宅し始める。 (もしかして、今日は告白できないのか……?まだ練習終わらないみたいだし、どうしよう……。いや!今日やるって決めたんだ!いつになろうが待とう!) そう心に決意した直後、剣道場から人が出てきた。どうやら練習は終わったようだ。 その中に彼女はいた。いつもと同じく長い髪を後ろでまとめている。また胴着は汗で体に張り付き妙に艶かしい。僕は自分の心臓の鼓動が速くなり始めているのを感じていた。 すると彼女は僕に気付くと驚いた顔をして、 「小道くん!私が練習終わるまで待っててくれたの!?」 「ま、まあね。ちょっと話したいこともあったから来るまで待ってようかなって……」 「私のためにごめんね……。あ、待ってて!今着替えてくるから!」 そう告げると川端さんは小走りで更衣室に駆けていった。僕が彼女の後ろ姿を眺めていると、 「君、咲希の事好きなの?」 「え、あ、はい……ってうぇ!?」 正直に答えてしまったことといきなり話しかけられたことに僕が驚いていると、声の主は少し呆れ気味にこちらを見た。 男子のように短い髪に意思の強そうな目、そして同じ胴着。あぁ、思い出した。彼女は”一之瀬廉”だ。剣道部最強で、男勝りの性格とその強さ、しかし整った容姿からよく告白されるがこちらも断り続けているという、あの一之瀬さんだ。 「へぇ、君がねぇ……、ふーん……」 「な、何ですか?僕が彼女を好きだと何か不都合が?」 「あ、いやいや、そういうことじゃないわ。ただこんな風な人なのかーって思っただけよ」 申し訳ない感じで一之瀬さんは笑ってみせる。しかしあの男子生徒といい、彼女といい、何故か不思議な魅力を感じる人たちだ。 すると彼女はさて、と言うと、 「まあ、頑張りなさい!どんな結果だろうと挑戦しようと思う意思は立派なものよ。私も応援してるから!」 「あ、どうもです……」 そう告げると彼女は立ち去っていった。そして入れ替わりに川端さんがやって来ると、 「待たせたね、それじゃいこっか」
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