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南南東の方角に稲光が走り、ほんのちょっとだけ遅れてから、低く唸る爆音が耳をつんざいた。
瞬間、瓦礫や廃材、人間なんかが宙を舞い、辺り一面に降り注ぐ。別に珍しいことじゃない。この世界ではもう、みんなが見慣れた光景だ。
「でやがったぞ、モンスターだ」
「思ってたよりだいぶ遠い……。テトリスの奴、相変わらず考えてることが読めないのよ!」
マズローとホンファが同時に反応する。
と、次の瞬間、倒壊した建物の瓦礫がこちらに勢いよく飛んできた。
「三人とも、私の後ろに下がって!」
ホンファの指示通り、カヅサ、キョウヤ、マズローの三人は、身を隠すようにホンファの真後ろへ下がる。
するとホンファは、"空間を蹴る右義足"で空中を蹴りあげ、透明な空間壁を作り上げた。
直後に飛んできた瓦礫は空間壁に当たって軌道をそらし、遥か後方へと飛んでいく。
「ナイッシュー、ホンファ」
「おちゃらけてる暇ないわよ、カヅサ。さっさとあのモンスターをぶっ倒しに行かないと」
そうして四人は、テトリスの放ったモンスターを倒すため、南南東へと向かった。しかし、いまだにモンスターの破壊行為は続いており、空からは瓦礫や廃材や人間が大量に降り注いでいる。
「ズラ夫、このままじゃ危険だから、レオンに連絡して、安全ルートを教えてもらって」
カヅサが、マズローに指示を出す。
「クソガキが。俺をズラ夫って呼ぶなっての……。おい聞こえていたか、レオン?」
『はいはーい、ばっちし聞こえてたですよー』
マズローの"五感を持つ義髪"を持って、街全体を見渡せる高所にいるであろうレオンが応答する。
『約4秒後に右前方からくるですねー。次は左ですー。あっ、そのままだと行き止まりなんで、そこの裏路地に入ってー……』
恐らく双眼鏡かなにかでこちらの様子を覗いているレオンが、"時を越える義眼"で、迫り来る危険を事前に知らせてくれる。
『あっ……』
「どうした、レオン?」
通信先のレオンが絶句している。
ふと、カヅサたちが空を見上げると、先ほどの瓦礫とは比べ物にならないほどの巨木が、カヅサたちのもとへと降りかかろうとしていた。
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