プロローグ

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レオンの指示で狭い裏路地に入ったのが裏目にでて、カヅサたちにはそれを避ける余裕がなかった。 「クソッたれがっ……! あいつの未来予知はいつもアテにならねぇ!」 「カヅサ、キョウヤ、私の手に掴まって」 マズローがぼやいてる間に、ホンファは両手でカヅサとキョウヤの手を握っていた。 「え、ちょ、俺は?」 「ごめんズラ夫、私の手は二本しかないの。んじゃ、グッドラック」 「おい待てこのや……」 マズローが言い終える前に、ホンファは"空間を蹴る右義足"でカヅサとキョウヤと共にワープし、巨木の被害を免れた。 「……見えた!」 ワープした先で、ホンファが叫ぶ。カヅサやキョウヤの目にも、巨大な昆虫のようなモンスターの姿が確認できていた。 甲虫のように、とても硬そうな鎧で全身を覆われており、六本ある脚はどれも先端が尖っている。テトリスのコレクションなら当然だが、非戦闘能力者の集まりであるカヅサたちの攻撃は、まず間違いなく通用しないだろう。 「やっぱり今回もカヅサの力に頼るしかなさそうね。毎度毎度申し訳ないけど……」 「今はそんなこと気にしてる暇ないよ。それより、キョウヤのことを守ってやって」 カヅサの姉でもあるキョウヤ。カヅサをアタッカーとする作戦では、"救済の左義手"を持つ彼女の死守こそが最優先事項となる。 マズローを置いてきてしまった以上、レオンからの指示を受けることもできない。これ以上モンスターの近くに寄るのは、かなりの危険を伴うだろう。 「ここから先は僕一人で行く。あいつを倒したら、できるだけ早くキョウヤを僕のもとへ連れてきて」 「わかったわ」 「カヅサ……!」 一人でモンスターのもとへと行こうとするカヅサを、キョウヤが引き止める。 「……無茶だけはしないで」 「……わかってるよ、姉ちゃん」 そう言って、カヅサは再びモンスターのもとへと走り出した。 (ふところに潜りこめれば……勝てる) そう考えているうちに、モンスターと目が合った。どうやら、ようやくカヅサの存在を確認したようだ。 (来た……!) そのまま走り続けるカヅサ。対して、モンスターの方は、その尖った前足を天高く振りかざす。 そして、そのまま勢いよく振り落とされた足が、カヅサの腹部を貫いた。 (……勝った)
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