0人が本棚に入れています
本棚に追加
レオンの指示で狭い裏路地に入ったのが裏目にでて、カヅサたちにはそれを避ける余裕がなかった。
「クソッたれがっ……! あいつの未来予知はいつもアテにならねぇ!」
「カヅサ、キョウヤ、私の手に掴まって」
マズローがぼやいてる間に、ホンファは両手でカヅサとキョウヤの手を握っていた。
「え、ちょ、俺は?」
「ごめんズラ夫、私の手は二本しかないの。んじゃ、グッドラック」
「おい待てこのや……」
マズローが言い終える前に、ホンファは"空間を蹴る右義足"でカヅサとキョウヤと共にワープし、巨木の被害を免れた。
「……見えた!」
ワープした先で、ホンファが叫ぶ。カヅサやキョウヤの目にも、巨大な昆虫のようなモンスターの姿が確認できていた。
甲虫のように、とても硬そうな鎧で全身を覆われており、六本ある脚はどれも先端が尖っている。テトリスのコレクションなら当然だが、非戦闘能力者の集まりであるカヅサたちの攻撃は、まず間違いなく通用しないだろう。
「やっぱり今回もカヅサの力に頼るしかなさそうね。毎度毎度申し訳ないけど……」
「今はそんなこと気にしてる暇ないよ。それより、キョウヤのことを守ってやって」
カヅサの姉でもあるキョウヤ。カヅサをアタッカーとする作戦では、"救済の左義手"を持つ彼女の死守こそが最優先事項となる。
マズローを置いてきてしまった以上、レオンからの指示を受けることもできない。これ以上モンスターの近くに寄るのは、かなりの危険を伴うだろう。
「ここから先は僕一人で行く。あいつを倒したら、できるだけ早くキョウヤを僕のもとへ連れてきて」
「わかったわ」
「カヅサ……!」
一人でモンスターのもとへと行こうとするカヅサを、キョウヤが引き止める。
「……無茶だけはしないで」
「……わかってるよ、姉ちゃん」
そう言って、カヅサは再びモンスターのもとへと走り出した。
(ふところに潜りこめれば……勝てる)
そう考えているうちに、モンスターと目が合った。どうやら、ようやくカヅサの存在を確認したようだ。
(来た……!)
そのまま走り続けるカヅサ。対して、モンスターの方は、その尖った前足を天高く振りかざす。
そして、そのまま勢いよく振り落とされた足が、カヅサの腹部を貫いた。
(……勝った)
最初のコメントを投稿しよう!