初陣編_肆

3/30
前へ
/40ページ
次へ
  矢田が今にも泣きそうな顔で、私の元へやってきた。 「・・・か・・・柏原さん・・・ あの、もう、どうしたらいいか・・・」 矢田はまだ20代中盤の若手社員だ。 それにも関わらず、 目の前の矢田はクタクタのシャツやボサボサの頭。 矢田の疲れを現すように、 くっきりと付いたクマで私より年上にすら見える。 私はパソコン作業の時にだけ使う眼鏡を外し、矢田を見る。 「・・・どうしましたか?」 矢田は先ほど席を外した神田が出て行った扉を チラチラと確認しながら、 ビクビクした様子で、要領の得ない言葉を続ける。 「・・・あ、の・・・。 物2には関係なくて・・・ だけど、もう、ムリで・・・。だから、その・・・」 私は矢田を落ち着かせようと立ち上がる。 「・・・矢田さん、こちらへ。」
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加