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「おい美桜」
一緒に立ち上がった美桜に、所長が声をかける。
「何よ?」
「オマエは別の仕事があるだろう」
「え? 何よ?」
「何よじゃねぇよ。島村くんの仕事を引き継ぐんだろうが」
「あっ」
美桜が、そういえばそうだったという顔をした。
「先輩の仕事って何でしたっけ?」
美桜が鷹斗に聞く。
「ああ、浮気調査だけど」
「ええええ、ちょ、私にはそんなの無理だよ。車の免許だって持ってないのに!」
美桜が所長に文句を言った。
「今回のターゲットは、電車通勤だし、駅から自宅までは徒歩だから、自転車で充分」
「ええええええ。ヤダよ~~~~~。浮気相手とタクシーに乗ったらどうすんのよ?」
「そのときは自転車で追いかけろ」
「無茶言わないでよ!」
「じゃあ行きましょうか」
揉めている叔父と姪を横目に見ながら、鷹斗はすずの母に声をかけ、三人を促して外に出た。
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