第3話 島村鷹斗

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到着した不動産屋は、あのアパートを管理しているだけあって、こちらもかなりの錆びれた感を出している。 「あの、すみません」 「はい。いらっしゃいませ。今日はどのような物件をお探しでしょうか?」 ドアを開けて中に入ると、中にいた中年の男が、愛想よく立ち上がって出迎えてくれた。 「いえ、そうじゃないんです」 「え?」 「あの……大手門町のコーポひまわりの103号室に住んでいる川本希里奈さんを探しているんですが」 「コーポひまわり……って、ああ、あんたあの人の知り合いか?」 「いえ、知り合いではないんですけど」 「ほんなら何の用じゃ?」 「いや、その川本さんのお嬢さんが、川本さんのことを探してまして」 「お嬢さん? あの人娘がおるんか?」 「え、ええ、はい」 「どこにおるんじゃ?」 「いや、どこって……」 基本的に依頼者の素性を晒してはならないのが探偵というものである。 逆に問い詰められて、鷹斗は焦った。
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