第3話 島村鷹斗

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「教えてくれ、こっちも困っとるんじゃ」 不動産屋のオヤジが身を乗り出してくる。 「困るって言われても」 「四か月分の家賃を滞納されて、突然ドロンされたんじゃ」 「ドロンって……」 忍者じゃないんだから、ドロンって何だよと鷹斗は思った。 「ちょっとだけ入院するいうて連絡があったから、まぁこっちも優しさで待ってやっとたんじゃけど、それが急に病院からおらんようになった言うて、警察がうちに来てのぉ」 「はぁ……」 「話に聞きゃぁ、末期のガンじゃったらしいわ」 「ガンですか……」 「おおそうじゃ。病院から消えてしもうて、どっかで野垂れ死んどるに違いないわ。そういうことじゃから、娘に家賃を払うように頼んでくれんか?」 「いや、しかし……お嬢さんの父親とは、すでに離婚をしているので、お嬢さんには支払いの義務はないように思いますが」 「そうなんか?」 不動産屋のオヤジは露骨にガッカリした。
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