第3話 島村鷹斗

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「いや……あの女が前に住んでいた住所」 不動産屋のオヤジがこっちに目を向ける。 「ええ……で?」 「夜須村になっとる」 「ヤスムラ?」 「うむ、もう十年以上前に廃村になって、誰もすんどらんとこじゃ」 「廃村ですか?」 「そうじゃ。何で契約した時に気が付かんかったんじゃろう」 不動産屋のオヤジは腕組みをした。 「どうやらこの住所も嘘っぱちじゃろうなぁ、まぁそういうことじゃから、女がどこに行ったかは分からんのぉ」 「そうですか……。あの、そのヤスムラってとこに神社ってありますか?」 「さぁ、どうかの? でも、人が住んどったとこじゃけぇ、あるにはあったろうが、今は誰も住んどらんのじゃから、当然神社も営業はしとらんと思うぞ」 「そうですか……有り難うございました」 鷹斗は川本希里奈の書いてあった住所を控えさせてもらうと、お礼を言って不動産屋を出た。
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