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「いや……あの女が前に住んでいた住所」
不動産屋のオヤジがこっちに目を向ける。
「ええ……で?」
「夜須村になっとる」
「ヤスムラ?」
「うむ、もう十年以上前に廃村になって、誰もすんどらんとこじゃ」
「廃村ですか?」
「そうじゃ。何で契約した時に気が付かんかったんじゃろう」
不動産屋のオヤジは腕組みをした。
「どうやらこの住所も嘘っぱちじゃろうなぁ、まぁそういうことじゃから、女がどこに行ったかは分からんのぉ」
「そうですか……。あの、そのヤスムラってとこに神社ってありますか?」
「さぁ、どうかの? でも、人が住んどったとこじゃけぇ、あるにはあったろうが、今は誰も住んどらんのじゃから、当然神社も営業はしとらんと思うぞ」
「そうですか……有り難うございました」
鷹斗は川本希里奈の書いてあった住所を控えさせてもらうと、お礼を言って不動産屋を出た。
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