初陣編_漆

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  あの日以来、 神田は私に声を上げることさえしなくなった。 何を言っても、分かった、と返すだけ。 謝る事はしなかったが、悪いと思っている様子で 小さくなっているのが可笑しかった。 何より嬉しかったのが、 矢田を大声で怒鳴りつけなくなったこと。 口調の乱暴さは取れないが、一定の冷静さが見える。   あの子はね、と佐野が苦笑する。 「誰より、この業界に向いているけど、 誰より、向かないのよねぇ・・・」 禅問答のようなコメントに私が問うた顔で、佐野を見る。
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