電報メール

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…今日もまた一人、アパートを去っていきました。 怖い感じは全くしないのに。 ちょっとでも不安になっただけで、場所を変えてしまうのはどうだろうと気楽に構えていました。 ただ私が、のんびりなだけなのでしょうか。 ……今夜もまた、人の気配がします。 今日こそは確認しようと、じっと感覚を研ぎ澄ませました。 すると、押入れから気配を感じます。 私は慎重に、押入れの襖を開けました……。 ………そこには人魂が一つ。 淋しそうに光っていました。 私に気がついたのか、ぱっと消えてしまいます。 「あ!」 叫ぶまもなく、気配は消えてしまいました。 ………人魂があった場所に、一枚の古ぼけた紙が落ちています。 そこには………、ただ一文が記されていました。 《カエリタイ》 私は無意識にそれをそこから出しました。 何となくだけど、このメッセージを送ったら何か変化があるかもしれない。 私は明かりをつけ、それをスマホのカメラ撮りました。 そして……、送信元が空欄の"最初"の電報メールの返信に添付し、"送信"しました。 ……………それから暫くの間、電報メールは来なくなりました。 何がどうなったかはわからないけれど、電報もメールも、相手の返事がないと不安なのは同じじゃないかなって思います。 その思いが双方に伝わっていたのなら、私も嬉しい。 ………一年が経ちました。 私は結婚することになり、ここを去ることを決めました。 そんな最後の日の夜、私の枕元にもんぺ姿の綺麗な女性が立っていました。 怖い感じはやっぱりありません。 私に顔を近づけ、優しく微笑みます。 『……ありがとう。あなたのお陰でやっと帰れます。……お幸せに。』 そう言うと、ふっと消えました。 …私がアパートを後にする日、大家さんが言いました。 「あんた、何かしたかい?あのメールがぱったりなくなったんだと! ……成仏出来たんかねぇ。 あんたは幸せにおなりよ。」 私は大したことはしていません。 でもそれが"彼ら"にとって、最善だったのなら、何よりです。
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