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 修司が塊肉でも食らうように、口を開け、俺に食らいつき、味わうように食んで、離れまた角度を変えて食らいついてくる。  見たことがある。 俺がサンドイッチを作ってやった時のことだ。  植物的な見た目にかかわらず、かなり大きかったそれを修司はがぶりと三口で食った。ちょっと驚いて、目が離せなかった。ギャップって、だぶんこういうのをいうんだ。  セクシーだった。  俺はカウンターに後ろ手をついている。修司はそんな俺に体重をかけないようにしながら、俺の口を何度も何度も角度を変えながら、がぶりがぶりと食らう。  俺はその野蛮な仕打ちに、まったくの無抵抗でいた。 肉厚な舌が口の中に侵入し撹拌し、また出て行ってそして再訪してくるのもそのままに、ただ、静かに耐えていた。カウンターの縁をきつく掴んで。  だって、修司は繰り返ししてくるキス以外は、何も望んでいないとでもいうように、俺に全く触れてこない。手は軽くカウンターに置かれているだけ。  そして俺はといえば、ただ修司の繰り返し行われる行為を、無自覚、無批判、無抵抗に受けていた。 (でも本当は全くそうではない。断固としてそうではない。抗いたい。これじゃ、だめだ、毅然とした態度をとらなければならない……ああ、でも修司から与えられる刺激には勝てない。)  時々、ほんの軽く、修司の腰から下と俺の腰から下が触れあう。 そうこうしているうちに、それはいつの間にか控えめに押しつけられ、そのまま離れない。  首から上で行われている唾液の交換と、腰から下で行われている、じりじりとした主張。それが、俺の心をどんどん挫けさせてゆく。    なあ、いったいどう言えばいい?  修司の固くなったものが、布越しでもはっきりとわかるんだ。  その大きさも形も、硬度も全部。  ということは、つまり修司にもわかっているはずだ。俺のがどんな事態になっているか。どんな風に修司のことを、感じているか。限界が近いこと、苦しいほどのやるせなさ、そういうこと全部。  
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