第一章

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放課後になると、皆すぐに机を並べ始めた。大半の生徒が購買の菓子類を広げて、皆で共有している。教材を出して、真面目に自習をしている者も少なからずいる。しかし、大半の生徒は友人らと過ごすことを趣旨としている。 隆生は畏怖するように、鼓動をドクドクと早めていた。 目前には、数人の女子が笑顔で立っていた。彼女らは一目散に隆生の近くに、机をくっつけて席を陣取った。お互い、腕を伸ばせば触れる距離にいる。 「じゃあ、広瀬くん。お勉強しようか」 にっこり、と擬音がつきそうな笑みを浮かべて、先頭の女子が言った。 彼女らは机を寄せて、周囲と同じように菓子類を広げ始めた。広げていた教材の上に、ざらっと陳列された菓子類の多さに、隆生は目を見張る。 「そんなに食べるのか……?」 「普通だよ。ね?」 「いや、アイスを買うの、忘れてる」 まだ食べるのか。 「でも、これ以上食べたら太るよね。アイスは辞めとこうかなあ」 アイス一つで、今日から体重が変わるわけではい。それよりも、その量のお菓子を食べる方を気にするべきではないのか。 目前で繰り広げられる彼女らの行動に不思議に思いながら、隆生は自習を進める。 この学校の偏差値は別段高いわけではない。しかし気を抜けば、すぐに皆から遅れを取るだろう。休んでいる分、隆生は誰よりも勉強しなければならない。 「私らで良ければ、声かけてね」 彼女らは彼女らなりに考えて、隆生に気を使わせないようにしているのだろう。適度な距離にいながらも、邪魔をしないように。 「ありがとう」 隆生は頷いて、ヘッドフォンをつけた。
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