第一章

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曲として形が出来上がったら、このフレーズはサビの部分だろう。とても短いけれど、何かを訴えるような迫力があって、それでいて美しい鋭さがある。 それを繰り返し繰り返し、彼は歌い、弾き続けた。 不意に彼は音を止め、顔を上げた。隆生を不思議そうに見る。 「なんでずっと突っ立ってるわけ? 座れよ」 顎をクイっと動かして、彼は近くの椅子を指した。 隆生は指定席に座り、すぐ側で彼の音を聴いた。心臓の鼓動が大きく鳴り響く。音と重なって、邪魔にすら感じるのに、鼓動は鳴り続ける。 彼の音を耳で聴き、彼を目で見る。なんて贅沢なことか。 惚ける隆生の顔は、夕陽に当たって余計に赤く染まっていた。 すぅ、と佐山の瞳が隆生を捉えた。 更に隆生の顔の熱が増す。思わず、「ぁ……」と、口から声が漏れた。 「見過ぎ」 佐山はふっと笑った。 音を止めて、ギターを壁に凭れさせた。彼は身体の向きを変えて、隆生と対面する。左手が隆生の膝に伸びた。 膝に触れられた瞬間、ゾクゾクと寒気のようなものが隆生を襲う。 「お前さ、ずっと俺のこと見てたろ?」 ひゅっと隆生の口から息が漏れた。 「普段からあんな目で人を見るわけ? それとも俺だけ?」 「み、見てない……」 「無意識だったら質悪いぞ」 「何、言って……」 「お前の目、変な感じがするんだよ」 「へ、変って……?」 「すげぇ、いじめたくなるってこと」 話している間も、佐山の手が徐々に太腿の付け根まで上がってくる。 親指が内側の際どいところをさすられて、隆生は、ひぅっと声を上げた。そして、驚愕により後退していた身体が椅子から落ちかけた。
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