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彼女らの行動は、まさに思い立ったが吉日といえる。クラス全体に向けて、大々的に案を発表する。唐突なことにも関わらず、クラスの半分以上の生徒が乗り気になっている。この状況を目前にして、「やっぱなし!」と断る勇気が、隆生にはない。
「京仁も参加してよ」
彼の名前が出てきて、隆生の心臓は大きく跳ねた。
佐山は頬杖をつき、周囲を傍観していた。友人らに囲まれながら、彼女の言葉で目を向ける。
「何……?」
「話聞いてなかったの。皆で勉強会しましょうって話よ。京仁も参加するでしょ?」
「何でそんな話になったわけ」
「強いて言うなら、私が広瀬くんともっとお近づきになるため?」
「広瀬?」
佐山はピクリと反応する。僅かに間を空けて、口を開いた。
「いいぜ」
「よしっ! 言質取った!」
彼女はクラス全体に彼が参加することを言う。すると、渋っていた残り半数の生徒が、佐山の参加と聞いて、「じゃあ……」と回答を覆していく。
「佐山がいるなら、俺も参加しよっかなー」
「別にあんたの参加は求めてないし、来なくてもいいわよ?」
「なんで俺の参加だけ求めてねぇんだよ! 参加するわ!」
佐山は頬杖をついた状態で、愛想の良い表情で笑っていた。ふと表情をなくしたかと思うと、顔の向きを変え、隆生と目が合った。彼の漆黒の眼光が隆生を捉えて、離さない。二人の存在だけが、世界から切り離されたように明瞭に見えた。
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