死してなお彼女は強く

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 俺はスーツ姿で暑苦しい恰好をしていたのだが、いざトンネル内に一歩、足を踏み入れると汗も引いていった。さすがに全国でも有数の心霊スポットに数えられるだけあって、不気味である。  壁にはコケやらツタやらが繁茂し、それが人の形にも思えてくる。ピタピタとひび割れからは水が不規則なリズムで落ち、その度にどきりとする。俺と住田は先陣を切って歩いた。  だんだんと目印にしていた柱が近付いてくる。俺は、その柱に確かな違和感を覚えた。それは柱と言うよりは寧ろ、天井に突き刺さった鉄柱のようでもある。一歩一歩、ゆっくりと踏みしめながら、俺は住田に問いかける。 「なあ、あれって本当に柱か?」  暗がりで表情はあまり分からないが、住田は短く唸った。 「違うかもな。ここに肝試しにきた連中が証に突き刺したんじゃねえの?」 「不謹慎な輩もいるもんだな」 「俺たちだって肝試しに来てんだ。人のこと言えないぜ」  俺は苦笑した。 「二人ともよく平気ね」  綾瀬さんは半ばあきれたように呟いた。
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