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なお、俺たちは歩いた。目標はゆっくりとではあるが確実に近づいて来た。やはりおかしい。ぼんやりとしていて全容は見えない。だが、それはまるで何かが吊るされているようで……。
その時だった。途中から押し黙ってついてきていた久保さんが突如、声を上げた。
「ねえ、見てよ!」
驚いた俺たちは、彼女の指差したそれを見た。俺たち三人は息を呑んだ。
そこにあったのは、低い天井からだらりと伸びたロープ。そして、それに首をかけて宙に浮いている女性の死体。
「まさか……」
その女性の顔には見覚えがあった。
久保さんだったのだ。
瞬間、俺は振り返った。そこには住田と綾瀬さんしかいない。事態が飲み込めない。
俺は死体に向き直った。久保さんの表情は、非常に穏やかだった。首をつっているとは思えないほどに。
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